単身赴任の部屋には、自宅の部屋と決定的に違う点があります。それは、数年後には必ず空にしなければならない、という前提です。
自宅であれば、モノが増えても「いつか整理すればいい」で済ませられます。しかし単身赴任の部屋は違います。帰任のタイミングで、必ず一度、部屋の中身をゼロにしなければなりません。今回から5回シリーズで、この「いつか畳む部屋」という前提に立った、モノを増やさない暮らし方を解説していきます。第1回となる今回は、シリーズ全体の土台となる考え方を整理します。
気づけば増えているモノたち
赴任が決まると、多くの人はまず生活に必要な最低限のモノをひと通り買い揃えます。家具、家電、生活雑貨——ここまでは、多くの人が意識的に「必要なもの」として選んでいるはずです。
問題はその後です。生活を続けるうちに、ちょっとした不便を感じるたびに、それを埋めるモノが少しずつ増えていきます。「あると便利そうな調理器具」「セールで安かった衣類」「趣味で集め始めたもの」——一つひとつは小さな買い物でも、数年という赴任期間を通じて積み重なると、決して小さくない量になります。
そして帰任が決まったとき、多くの人がこの積み重なったモノの量に途方に暮れることになります。段ボール十数箱分の荷物を前に、「こんなに買った覚えはないのに」と感じる——これは、単身赴任経験者の多くが口にする、よくある実感です。
増えたモノには「三重のコスト」がかかる
モノが増えることの問題は、購入時の出費だけにとどまりません。帰任のタイミングで、増えたモノには三重のコストがのしかかってきます。
①引っ越し代
荷物の量は、そのまま引っ越し費用に直結します。段ボールの数が増えるほど、トラックのサイズや作業員の人数が増え、引っ越し業者の見積もりも高くなります。荷物量の違いだけで、引っ越し費用が数万円単位で変わることも珍しくありません。
②処分費
持ち帰らないと決めたモノは、処分する必要があります。粗大ごみとして出す場合は収集手数料がかかり、不用品回収業者に依頼すればさらに高額な費用が発生します。家具や家電など、サイズの大きいものほど、処分費用もかさみます。
③処分の手間
見落とされがちですが、処分そのものにかかる時間と労力も、立派なコストです。粗大ごみの申し込み手続き、フリマアプリでの出品作業、不用品回収業者とのやり取り——帰任準備で慌ただしい時期に、こうした作業に多くの時間を取られることになります。
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このように、赴任中に「なんとなく」増やしたモノは、購入時の金額以上に、帰任時に何倍ものコストとなって返ってくるのです。
「買うときに、帰任日のことまで考える」という基本方針
このシリーズを通じて一貫して提案したいのが、「買うときに、帰任日のことまで考える」という基本方針です。
何かを買おうとするとき、「これは今の生活に必要か」だけでなく、「これは赴任が終わるとき、どうするつもりか」まで、あわせて考えてみる。持ち帰るのか、その場で使い切って処分するのか、そもそも買わずに済ませられないか——この一手間を加えるだけで、帰任時に抱えるモノの量は大きく変わってきます。
赴任期間の長さは人によって異なりますが、「いつか終わる生活である」という前提そのものは、すべての単身赴任者に共通しています。この前提を、日々の買い物の判断基準に組み込んでおくことが、このシリーズが提案する暮らし方の核心です。
禁欲的に何も買わない、ということではない
ここで誤解のないように強調しておきたいのは、このシリーズが目指すのは「何も買わない禁欲的な生活」ではないということです。
単身赴任生活は、ただでさえ家族と離れて過ごす負担の大きい期間です。その中で、生活の快適さを削ってまでモノを減らすことは、本末転倒です。必要なもの、生活の質を上げてくれるものは、きちんと選んで買えばよいのです。
大切なのは、「快適さは確保しつつ、増やさない」という現実的な立ち位置です。モノを買うこと自体を否定するのではなく、買い方・選び方・手放し方に一手間かけることで、快適な生活と、身軽な帰任準備を両立させる——これが、このシリーズを通じて目指す暮らし方です。
シリーズ全体の道筋
今回の総論を踏まえ、次回以降は、より具体的なテーマに落とし込んで解説していきます。
- 買う・借りる・持ち込む——単身赴任の「モノの調達方法」を3つに仕分ける
- 季節ごとに増えていくもの——扇風機・暖房器具・こたつをどうするか
- 気づけば紙とモノの山——書類・郵便物・記念品を溜めない仕組み
- 自宅と赴任先、服はどう分ける?衣替えと帰省を使った「二拠点の持ち物運用」
いずれの回も、「いつか畳む部屋」という前提を軸に、無理なく実践できる工夫を紹介していきます。
まとめ:「いつか畳む部屋」という前提を持つ
- 単身赴任の部屋は、数年後には必ず空にしなければならない「いつか畳む部屋」である
- 生活の中で少しずつ増えたモノは、帰任時に段ボール十数箱という量になりがちである
- 増えたモノには、引っ越し代・処分費・処分の手間という三重のコストが後からかかる
- 買うときに「帰任日のことまで考える」という一手間が、帰任時の負担を大きく左右する
- 目指すのは禁欲的な生活ではなく、快適さを確保しつつモノを増やさない現実的な暮らし方
次回は、モノが増えやすい具体的なジャンルと、買う前に立てておきたい判断基準について解説します。
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