単身赴任は酒量が増える——「気づかないうちに」が起きる4つの理由

健康管理・メンタル

単身赴任を始めてから、「以前より飲む量が増えた気がする」と感じたことはないでしょうか。今回から5回シリーズで、単身赴任者と晩酌の付き合い方についてお話しします。

最初にお伝えしておきたいのは、このシリーズは「意志が弱いから飲みすぎる」という話ではない、ということです。単身赴任で酒量が増えるのは、意志の強さの問題ではなく、酒量が増えやすい条件がいくつも揃ってしまう環境の問題です。第1回となる今回は、その条件を整理し、まず自分の現状を客観的に知るところから始めます。

単身赴任で酒量が増える4つの理由

①誰も見ていない——家族の目という抑止が消える

家族と暮らしていれば、「もうそのくらいにしたら」という一言や、単純に誰かが見ているという状況そのものが、飲みすぎへの自然な抑止として働きます。単身赴任先では、この抑止がまるごとなくなります。何本飲んでも、何時まで飲んでも、誰にも気づかれません。この「見られていない」という環境は、想像以上に酒量に影響を与えます。

②時間がある——帰宅後の長い夜を埋める手段になる

家族と暮らしていれば、帰宅後の時間は子どもの世話や家事、会話などで自然に埋まっていきます。しかし単身赴任先では、帰宅後から就寝までの時間が、丸ごと自分だけの時間として残ります。この「埋めるべき長い夜」を過ごす手段として、お酒が習慣的に選ばれやすくなります。

③寂しさや疲れの対処法として手軽

一人の部屋で感じる寂しさや、仕事の疲れを紛らわせる方法として、お酒は最も手軽な選択肢の一つです。コンビニで買ってすぐに飲める、特別な準備もいらない——このお手軽さが、日々のちょっとした感情の波を、お酒で処理する習慣につながりやすくなります。

④歓迎会や付き合いが多い

単身赴任者は「家族がいないから空いているだろう」と飲み会に誘われやすい立場です。着任直後は特に歓迎会や顔合わせの場が増え、飲酒の機会そのものが物理的に多くなります。

この4つの条件は、単身赴任者であればほぼ誰にでも当てはまるものです。だからこそ、「自分の意志が弱いせいだ」と自分を責める必要はありません。まずは、これが環境によって起きやすくなっている現象だと理解することが、このシリーズの出発点です。

まず自分の現状を知るところから始める

対策を考える前に、まず必要なのは「自分が実際にどれくらい飲んでいるか」を正確に把握することです。多くの人は、自分の飲酒量を実際より少なく見積もっている傾向があることが知られています。「そんなに飲んでいるつもりはなかった」というのは、決して珍しい感想ではありません。

そこでおすすめしたいのが、1週間、飲んだ日と量をメモに残すだけの「記録」です。難しいアプリや専用のノートを用意する必要はありません。スマートフォンのメモ機能に、「月曜:缶チューハイ2本」「火曜:なし」といった形で、飲んだ日にその都度記録するだけで十分です。1週間続けると、自分の飲酒パターンが客観的な数字として見えてきます。

「純アルコール量」で自分の飲酒量を把握する

飲酒量を把握する際、「缶何本」「グラス何杯」という数え方だけでは、実際の体への負担を正確に捉えられません。お酒の種類によって、含まれるアルコールの量がまったく違うためです。

厚生労働省が2024年に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、飲酒の健康リスクを考える際は「純アルコール量」を基準にすることが推奨されています。純アルコール量は、以下の式で計算できます。

純アルコール量(g) = 飲んだ量(ml) × アルコール度数(%) ÷ 100 × 0.8

(0.8は、アルコールの比重を示す係数です)

具体例

  • 缶ビール(350ml、度数5%)の場合:350 × 0.05 × 0.8 = 約14g
  • 缶チューハイ(350ml、度数9%)の場合:350 × 0.09 × 0.8 = 約25g
  • ロング缶ビール(500ml、度数5%)の場合:500 × 0.05 × 0.8 = 約20g

厚生労働省の指標では、「節度ある適度な飲酒」の目安は1日あたり純アルコール量で約20g程度とされ、生活習慣病のリスクを高める飲酒量は、1日あたりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上とされています。度数の高い缶チューハイを2本飲むだけで、この目安を超えてしまうこともあり、感覚だけで飲酒量を判断することの危うさがわかります。

先ほどの1週間の記録に、飲んだお酒の種類・量・度数を書き添えておけば、この計算式を使って、自分の純アルコール摂取量を具体的な数字として把握できます。

まとめ:まずは「知ること」から

  • 単身赴任で酒量が増えるのは、意志の弱さではなく、環境的な条件が揃うため
  • 「誰も見ていない」「時間がある」「寂しさ・疲れの対処法として手軽」「歓迎会や付き合いが多い」という4つの理由がある
  • 対策の第一歩は、1週間、飲んだ日と量を記録し、自分の現状を客観的に知ること
  • 「純アルコール量」という基準を使い、缶ビールや缶チューハイの度数と量から、自分の摂取量を具体的に計算してみる

※本記事は厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」等の公表情報を参考にしています。飲酒量に不安がある場合や、すでに生活に支障が出ていると感じる場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医や、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどの専門機関にご相談ください。

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次回は、「意志ではなく環境を変える——家に酒を置かない仕組みの作り方」について解説します。

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